3.視 察 状 況
 
       以下に視察した方々の意見や施設職員のアドバイスなどを順不同でまとめた。
 
(1).仙台市天文台
 
 @望遠鏡関連
   ・41cm反射は圧巻だが,筒内気流や時々の鏡面のメッキのし直しなどを考えると,一考を    要する。
   ・反射望遠鏡を一般の人と専門的な人とが使うとなると,カセグレン式にしたり,ニュート     ン式にする必要があると思われるが,その切り替えに問題が生じはしないか。
   ・主鏡を大口径反射にしても,ある程度の屈折が仙台のように必要である。
                               (福士哲郎)
   ・小石川さんは,大口径反射と屈折望遠鏡の組み合わせを薦めていたが,誰もがすぐ      に使用できることを前提に考えた場合は,やはり屈折望遠鏡がいいと思う。
   ・反射は,専門家が研究するには必要だが,市民に開放するとなると屈折望遠鏡がよりよ     いと思う。
   ・市のシンボルとして考えた場合でも反射の口径では,すでに他施設に追いつけない。
                                 (千葉 進)
   ・主望遠鏡が41cm・・・いいなあ,太陽望遠鏡もほしい     (工藤幸子)
 
   ・CCDカメラを取り付けられる望遠鏡があると、空が明るくてもきれいな画像が得られる。
    空の条件が悪くてもパソコンでその日の数分前の映像が得られる。・・・これは光の条    件が悪いところだからこそ設置を考えるべきだ。 
 
   ・CCDカメラを取り付けるならば、反射望遠鏡のための冷房装置を考えるべきだ。
   ・自動化されている多くの装置は、手動でも動かせるように作るべきだ。
                                  (八重樫裕幸)
   ・小石川さんの提案だと黒石市でも口径40〜50センチの反射望遠鏡に口径15〜20セン     チの屈折を同架させた方式がいいだろうといっていた。

   ・理由として







 

1.受光量の大きな反射望遠鏡は外すべきではない。
2.30年後の使用者のことまで考えべき。
3.反射に冷却CCDを使うことで空の明るさは解消できる。
4.反射を含めることで様々な利用者に対応できる。
5.屈折望遠鏡のみだと鏡筒のシナリが無視できないが、反射に同架させる
 ことでシナリを解消できると思う。
6.観望のみなら屈折単独でも対応可能だが,観測研究となれば大口径が
  やはり必要になる。
 
   ・屈折のみの場合,鏡筒のシナリがどの程度あるかちょっと気になる。調査すべきと思う。
   ・冷却CCDカメラや光ファイバー接眼鏡は取り付けたいものだ。
   ・25センチクーデ式望遠鏡の値段も知りたい。(アストロカー:20センチクーデ式で3000万)
    20cmクーデ式はたいそう使い勝手がよいとのこと。       (後藤・工藤剛)
 
   ・天体用CCDカメラを50cm反射に取り付けると19〜20等星まで撮せる。
   ・どうしても予算がないときは移動天文車の導入も考えられる。    (後藤)
   ・観望会だけを考えるなら、屈折のみでもよいと思う。  (小石川氏談:後藤・工藤)
 
   ・研究分野になると屈折では集光力が足りなくなり悔しい思いをすることになる。
 
   ・屈折の問題点   :色収差(色のにじみ)がある。
            :価格(おおよそ屈折の25cmと反射の60cmが同じ価格)
 
   ・反射の問題点   :筒内気流(筒の中を流れる気流による像の乱れ)がある。
     気流を押さえる対策として、夜間使用する望遠鏡と太陽用の望遠鏡は別にして、
     日中ドームを開けない。(熱の出入りを極力避けるため。)(小石川氏談:後藤)
 
   ・撮影器具も従来のフイルム撮影機器(アナログ)とコンピュータによる画像処理ができるC    CDカメラ関係機器(デジタル)の両方をそろえておいた方がよい。スタッフにしても来館    者にしても、どんな人にでも対応できる必要がある。(天文台技師黒須氏談:後藤)
 
 
 A施設・設備関連
 
  a ドーム・観測室関係
   ・直径5mのドームだとやや窮屈な感じ,7mくらいが適当と思われた。
   ・ドーム下の観測室は「四すみのある方形が,物おき場所として使えるので便利」との説明    だったが,屋上の場合,受ける風圧を考えると一考を要する。
 
   ・スリットの開閉も電動の方がよいように思った。
   ・「床には柔らかめのものを敷くべき。接眼鏡などを落としても壊れにくいから。」
   ・ドーム内面が白一色でアングル等なにも凹凸が無いのは、簡単な投影等に使えてよい。
                                  (福士哲郎)
   ・ドーム型は風に強い。
   ・やはり入室口とは別にもう一つ観測室から屋上への出入り口があった。
                                  (工藤剛)
  b プラネタリウム・制作室・暗室・工作室関係
   ・プラネタリウムの解説等も自作ということで、市民にその誠意が伝わっているように思われ    た。                             (三上フキ)
   ・既製展示物の他に、天文台職員が作製・撮影したものがあり手作りの味がある。
   ・プラネタリウムの上映内容も職員による制作・上映であるため充実していると感じた。
    ソフト面での充実が図れるなら、プラネタリウムもあってもいいと思った。(千葉 進)
 
   ・観賞する対象者のレベルに応じた投影が可能。午後の投影は平日1回・土曜3回・日曜祝    日5回と状況に合わせて分けている。ガイド用パンフレットを年数回発行し市民に広くPR。
                                  (福士哲郎)
 
   ・旋盤,丸鋸などの中型機器から各種工具を備え,故障の修理や観察に必要なちょっとした    器具の製作を、随時行えるような工作室があった。(山口明江・福士哲郎・八重樫裕幸)
 
   ・プラネタリウム用などの解説テープを、BGM入りで製作できるような装置が整っている。
   ・コンピュータ関係の設備もあったが,これからはますます必要になるだろうと思われた。
 
   ・まれに起きる天文現象を記録しておいたり,それらを観望会や談話会・講習会などで利用    するためにも,写真暗室は必要である。              (福士哲郎)
 
 
   ・階段の壁にあった木製の木星やその他の惑星のモニュメントがいいと思った。
   ・ゲーム感覚で探せる四季の星座早見盤や日食月食のしくみがひと目でわかる模型,その    他誰でも自由に触って楽しめるゲーム機的な展示がおもしろいと思った。  (工藤幸子)
 
   ・暗室は操作を教える必要もあるので、2〜3人が同時に入れるスペースをとること。
   ・電気電子部品の修理を考えると、オシロスコープ等の検査装置も必要になると思う。
   ・展示物でこまめに変更するようなものはなるべくコンピュータを使用し,タッチパネルで操    作できるようにするのが良さそうである。
 
   ・インターネットは今では接続していないと恥ずかしいと思う。
   (ドメイン名はScienceMusiamの略称を用いてSM.kuroishi.aomori.jp  でどうか?)
                                  (八重樫裕幸)
   ・晴天時に直接望遠鏡を覗くための予備知識を与えたり,気楽にモデルや模型・写真等を見    たり,操作したりして天体に対する関心を高めるにも展示ホールは必要である。
                                  (福士哲郎)
  c アストロカー(移動天文車)[VEGA」関連
   ・全国に10台程度とのことであるが、今回の仙台訪問の最大の収穫だった。
   ・障害者のことも考慮した作りで,車椅子や寝たきりの人でも望遠鏡を覗けるように昇降リフ    トやファイバースコープを使った接眼鏡など気配りの行き届いた車であった。
      後藤光学へ特注450万             (福士・千葉・工藤幸子・山口)
   ・電源を確保できない場所等での使用も考えて発電器を搭載している。
   ・20センチクーデ式と多少性能は劣るが、専門家が望遠鏡を携えて出前してくれるというの    は、市民にとって相当の魅力だろうと思った。              (福士)
  
   ・4tトラック(ロング)のシャーシに、箱形観測室+ドームを積んだもの。
   ・望遠鏡はコンピュータに接続され極軸あわせも手軽に行える。
   ・観測時はアストロカーのジャッキ(4カ所)だけでは弱いので、補強して使用している。
   ・クーデ式20cm屈折望遠鏡は、接眼部の高さが見やすい位置に固定されている。
                                     (工藤剛)
   ・望遠鏡も含めて約1億円。ふるさと創生資金を活用。
   ・バッテリー24Vを100Vに変換し望遠鏡を駆動。約3時間はOK。    (後藤)
 
   ・スタッフ2人+運転手で年間75回の出動。内訳は下。
    市民センター 35回、学校 20回 その他(少年自然の家、特別観望会、養護施設)
    参加人数 100〜150人  200〜300人
    大型双眼鏡 1台、小型望遠鏡 2台も活用。
    詳細:当日の天気により15時決定。実施決定後曇天となった場合裏プロに切り替える。
    裏プロ 星空・星座の探し方(15分)。その季節のスライド解説(90分は確保)。
        神話。天文クイズ(15分)。各自の得意分野の話(スタッフにより異なる)。
       ※対象となる人に応じて話せるので機械ではなく生で話をすることが大切。
 
   ・どこへでも行けるのはよいが維持費がかかる。車の車検+望遠鏡の保守点検年100万+
    運転手委託時給3500円(年間130万)など。    (小石川さんの話:後藤)
   ・晴れた日には晴れた日の星の見方があり、曇りの日や雨の日にはその日なりの星の楽し    み方があることを忘れないこと。                 (工藤剛)
   ・身障者用の観望会は今のところまだ多くはない。施設の職員の理解や心配,障害の程度    や体調の善し悪し,天候等の様々な条件を考えると、障害を持つ人に月や星を見せるため    のノウハウの蓄積は、今後の高齢化社会を考えるまでもなく大変重要な活動だと思う。
 
 B組織・運営関連
 
   ・現在移転を計画中。(現在の土地は国からの借地。駐車場の問題。市街地の光害。建物    の老朽化などの理由から。)
    平成17年に開台50周年となるのでこの年にオープンか着工を、と思って計画している。
   ・市民の運動でできた全国初の天文台。               (後藤)
   ・他県の天文台の例
     和歌山県


 
  美里町(日本最大級の反射望遠鏡口径1m以上)
     問題点:町内から来るまで30分以上もかかる。
 
  川辺町(同様の口径103cmの反射望遠鏡)
             こちらはJR駅から徒歩で15分。
   ・天文台の種類
     都市型 :月、木星、土星などおよび明るい星のみ対象とする。
 
     郊外型 :そこそこ空の暗い所。多少不便だが公共交通機関が利用できる。
          (新仙台市天文台は郊外型になる予定。市街地の西)
 
     遠距離型:真っ暗な所。自然破壊の問題をクリアするため環境調査不可欠。
                                    (後藤)
 
   ・仙台市天文台の運営上の3本の柱と内容 (このような柱を立てて訴えて行くべき)
 
    @学校教育 ・ダイレクトメールで天文学習希望校の募集。
          ・市報、マスコミ・タウン誌等を利用してのPR。
          ・小5,6、中1の天文学習(前述)
          ・先生方の研修、プラネタリウムの利用。
          ・プラネタリウム鑑賞の前に実物の望遠鏡の説明を組み入れている。(*)
          ・太陽望遠鏡を別に設置。(*)
          ・コンピュータ→インターネットが自由にできる体制。(*)
 
 
    A社会教育 ・市民センターへのPR→要請に応じてアストロカー。
          ・一般への天文台、展示物等の公開。
          ・以下@の(*)と重複。
 
    B研究と観測 ・小惑星、木星などの観測。
          ・太陽望遠鏡で記録をとると同時に、来館者へその日の太陽表面の様子を
           公開している。
          ・インターネットを介して東北大学と接続し連携をとっている。
          ・冷却CCDとスライドで、デジタル・アナログ両面の対応を心がけている。
          ・以上の情報を@、Aへ還元、利用している。
                                (後藤・工藤剛)
   ・10人ものスタッフで望遠鏡・プラネタリウムをはじめすべての運営にあたっている。
 
   ・はじめ,設備の一部を有志や市民の寄付だけで購入し,それを市に寄贈したため天文台    の建設が早まった,という説明には感動した。            (福士)
 
 
   ・上のような経緯のせいだろうが,単なる市営の天文台ではなくて,市民天文台として活動    している点に感心。市の組織としても,ある程度独立した形でかなり独自の裁量で運営が    可能なようである。黒石市の場合どうなるかちょっと心配。
 
   ・職員にも星好きが集まっているようである。            (千葉)
   ・設立当時から市政のトップに、天文台の必要性を理解してくれる人が結構いて力になってく    れた。現在の運営でも理科系教員の退職者等が協力している。    
 
   ・天文同好会は天文台の運営には直接参加していない。(数人は両方の組織に所属してい    る。過去に一緒に運営に当たったこともあったが,同好会と天文台の間に運営上の意識の    差が出てきたので切り離した。)
 
   ・天文台運営のためのボランティアは別組織としてあり,その組織内で星についての教育や    指導も行っている。これには天文台も当然協力している。       (工藤剛)
 
   ・入り口付近に「天文なんでも相談室」という部屋があり,来談者はもとより電話でも随時
    天文ファンの疑問や相談に対応できる体制になっている。       (福士)
 
   ・小学校5・6年は希望校だけだが,中学1年生は必修で希望する1日の午後,天文につい    ての授業を行っている。なお,各学年別に(小5,小6,中1) 使用する20ページほど    の系統だった内容豊かなテキストも作成されている。
    ※当日は、参加生徒を2グループに分け、展示学習とプラネタリウム学習を平行して行い
     途中で入れ替える方式をとっている。
 
   ・バス代が予算化されている。指導案を作成し,希望者に配布している。天文は特殊な学習    であるため,このような対応は学習のかなりの手助けになっているし,教師にも魅力的。
   ・隔月発行の「天文台だより」がNo150になっている。(福士・工藤幸子・山口・後藤)
 
   ・冬にいろいろな講座を開講している。
   ・冬場の天文台活用に配慮を。例えばドーム内にプラネタリウム・スライド撮影をする。
    また、折り紙講座で星座の折り紙など多種多様な発想で星に関する講座を開くなど。
                        (仙台市天文台技師黒須氏談:後藤)
   ・天文台開設後10〜15年頃をピークに、プラネタリウムの利用者が減少傾向。(福士)
 
   ・学校の天文台利用も減少傾向にある。(天文台隣の公園へのバスの乗り入れが禁止され    た影響が大きいと分析)                     (工藤)
 
 C提言・その他アドバイスなど
 
   ・雪のことを考えると黒石市も郊外型天文台がいいだろうと思う。 (小石川氏談:後藤)
   ・天文台の地理的配置としては北側に道路が来るように、南側は開けているようにすると道    路が近くても比較的安心とのこと。         (小石川氏談:後藤・工藤剛)
 
   ・市内の子供達に「望遠鏡の大きさ」や「どんな天体が見たいか?」などのアンケートを採    って見る必要があると思う。これを資料として添えればより説得力がある。
                  (仙台市天文台小石川氏談・三上フキ・後藤・工藤剛)
   ・視察した後の報告書をしっかり作成し、市への要望書に添付する。(後藤)
 
 
   ・仙台市天文台の姿勢は、星の研究のためより学校や社会教育に役立てようと心がけている    ということで大変参考になった。
   ・黒石市の天文台もその役割として、小学校、中学校の学習の場として割り当てたり、銀河    宇宙探検隊の継続とか青年部・婦人部や観望会やすべての年齢層を対象とした催し物の    企画等により、あまり専門的でなくても多数の市民に利用されるような工夫が一番大切だと    思います。それもあまりお金をかけない方向で。           (三上フキ)
 
   ・施設はスポカルインの場所でよいと思いますが、運営については図書館や視聴覚関係(ビ    デオやCD鑑賞)その他の施設とのつながりも考えて計画してほしいです。(三上フキ)
 
   ・移動天文車を活用したせいもあるのだろうが、天文台の望遠鏡の一般夜間観望が、各月    の第1と第3金曜日だけというのは意外であった。それも職員による観望会で一般人が自由    に使用できるものではない。やはり、管理上の問題か?。      (福士・千葉)  
   ・小石川氏の自信に満ちたかつ余裕のあるプラネタリウムの解説には、長年の経験と知識の    豊富さを感じた。
 
   ・小石川氏の柔らかな人柄が、子供から老人に至るまでいろいろな人を引きつけ、1回だけ    の観覧で終わらない魅力となっているのではないか。        (福士・千葉)
 
   ・小望遠鏡、ビデオ、スライド等のソフトの貸し出しについて、あるのかどうかを聞き忘れ     た。                             (千葉)
 
   ・まず子供達の母親に天文台の必要性を理解してもらうこと。      (八ツ柳氏)
 
   ・市議や市長も観望会や例会に招待し、派閥に偏りのないよう留意しながらできるだけ接点    を持ってすばるの会の理念と天文台の必要性を理解してもらうこと。   (八ツ柳氏)
 
   ・子供達や市民へのアンケートは市議の活動範囲と重なるので、彼らの立場や考えも考慮す    ること。                  (八ツ柳氏:仙台市科学館指導主事)
  
(2).仙台市子ども宇宙館(泉図書館を含む)
 
   ・宇宙展示室を拝見して、実際に操作してみたり、体験してみたり、コンピュータを操作して    みたりで、子供達にとっては大変興味深い物がある。
   ・拝見できなかったが、宇宙劇場もすばらしく夢があると思う。
 
   ・一階、二階の図書館では、本はもちろんのことビデオの貸し出しもしていたことが大変な    驚きだった。また、見たいビデオは申し込めば、その場で個室のような場所で鑑賞できる    のも魅力的だった。
                                   (山口明江)
   ・展示してあるものは、最初はいいがすぐに飽きられるような気がした。  (千葉進)
 
   ・立派な建物や設備、また泉市図書館の設備の良さと利用者の多いことには驚きました。
                                   (工藤幸子)
 
   ・コンピュータによる疑似体験も含めて、体験できるコーナーは黒石でもいくつかほしいと
    思いました。                          (三上フキ)
 
(3).青森県総合学校教育センター
 
   この施設については、視察した会員全体の意見を取りまとめる機会がなかったので、事務   局のみの見解とした。
 
 @望遠鏡関連
 
   ・極軸の微調整が済んでいない状態で視察させていただいたので、担当者の方には気を使    わせることになってしまった。(ただし、完成後数カ月を過ぎて、未だ極軸の微調整が済    んでいないのは、望遠鏡製造メーカーとの契約に問題があったように思われる。)
   ・担当者の話だと、発注時に望遠鏡の代金も、施設全体の工事費に含まれるような契約で、    専門家の意見、その他の要望を取り入れる形の望遠鏡導入でなかったために、現在担当    している者として非常に使いづらい、とのこと。
   ・口径60センチカセグレン式反射望遠鏡で焦点距離7400ミリ。赤道気はフォーク型。
    ドームの直径は5m〜5.5mと思われるが、望遠鏡があまりにも大きく、多少狭いと感じ    た。圧巻であった。
 
   ・<像の見え方について>・筒内気流が非常に激しく、何らかの対策が必要と感じた。
     観望した状況:40ミリの接眼鏡(185倍)を使用。接眼部の高さが約2m、梯子使用。
      同架してある屈折望遠鏡にCCDカメラを搭載。木星をモニターにも撮していた。
 
    木星を観望したが、ドームを開けてすぐだったため、はじめ、像のゆらぎが大きく不安定    であった。シーイング、透明度ともに悪い日で雲量も多く、この日の観望では口径60セン    チの威力を伺い知ることはできなかったが、1時間ほどして少し像が安定してきたように思    えた。
     ※このことから、良像を得るためには、空の状態のよい日でも最低2〜3時間前からド      ームを開けて、熱を逃がしておく必要があるように思われた。
     ※大口径反射型は星雲や星団などの暗い天体に特に威力を発揮するのだが、今回は      天候が悪く、そうした種類の天体を観望できなかったのが残念だった。
 
   ・望遠鏡が大きい分、これからの微調整、再調整も大変だろうと思う。特に、担当者の話に    よれば、望遠鏡納入メーカーのサポートがあまり十分ではないようであり、やはり契約時    の契約内容に問題があったといわざるを得ない。
    こうした場合、担当者が必要以上の大変な苦労を背負うことになる。
 
   ・<その他>
   ・カセグレン焦点とニュートン焦点の使い分けは可能だが、ニュートン焦点は3mもの高さに
    なるときもありハシゴでも眼視は無理と思われる。
   ・架台のフォーク式は北の空が非常に見ずらい欠点がある。バランス補正も難しい。
 
   ・望遠鏡が大きく接眼部が高い位置に来るのだが、はしごがキャシャで見づらい。
   ・写真、CCDとも太陽や月の像が画角からはみ出す。これも発注時に直接焦点の画角を吟    味する必要があった。
 
   ・接眼鏡を取り替える毎に焦点が動くのでレデューサーの脱着が必要となる。これも望遠鏡    の仕様を決めるときにメーカーと詰めておかないといけない部分。
    (倍率を変える度に、毎回取り付け取り外し作業が必要ということは、スムーズな観望は
     無理ということになる。)
 
 A施設・設備関連
 
   ・円形観測室に制御用コンピュータ用の机が出ていて使いづらい。
 
   ・観測室の床に這うコード類が露出し、非常に邪魔になる。(望遠鏡電源、CCDカメラの    コード、望遠鏡コントローラーのコード等)→これは埋め込み構造にするとよい。
 
   ・ドーム内は望遠鏡が大きいため、フロアスペースが狭く、ハシゴの移動も大変で、電動昇    降台(障害者用)等を取るためにはもう1mほどほしい。(やはり7mドームになるか?)
 
   ・一般的に、望遠鏡架台部は振動を押さえるために観測室の床と縁を切り独立させて地面か    ら立ち上げるか、もしくは架台部分の設置場所だけでも特別に振動に強い構造にするのだ    が、そうした配慮はなし。架台部分は直に4階の床に乗せてあった。
 
   ※でも、視察者が飛び跳ねても、特別な振動の影響はなかった。(低倍率のせいか?)
 
   ・施設そのものが湿地帯に建てられているので、地盤の沈下やパイルの浮き上がりなどの心    配があり、大型車の走行による振動もある。
 
 
   ・<プラネタリウム> 席数:約20    約8000万円
 
    本格的なものであった。手動操作の煩雑さを嘆いていたが、コンピュータと連動させて操    作する方法は使いやすそうであった。
 
    ※教師が研修等で、このプラネタリウムの操作に習熟しても成果を披露する場はないと思     われるが、県内各地区にあるプラネタリウム施設の職員の研修には良さそうである。
 
    ※学習面で教師が利用するとすれば、このプラネタリウムの投影像を写真撮影することで     過去や未来など、ある特定の日の星座や星の写真教材を容易に作成できる点があげら
 
     れると思う。(現実の空で、教材にするための日周運動や星座の写真を取ると天候や光     害、時間の制約、季節による星座の変化などが障害となり、四季を通しての天体の変化     を教材としてまとめ上げようとすると、非常な努力を要することになる。)